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第325回 McCHURCH SOUNROOM "Delusion"

McCHURCH SOUNDROOM - "Delusion"
1971 GERMANY-PILZ 20 21103-7
(Heavy Progressive Rock)

RARE:★★★★★★

Member :

Sandy McChurch(vo,flute), Heiner Althaus(g),
Kurt Hafen(b), Norbert Jud(ds), Alain Veltin(key)


Side (A)
1. Delusion
2. Dream Of Drummer
3. Time Is Flying


Side (B)
1. What Are You Doin'
2. Trouble Part I
3. Trouble Part II


ジャーマン・ヘヴィ・プログレッシヴの隠れた名作の1枚です。 ジャーマン・ロックの王道レーベル、ピルツから出された作品では ありますが、彼らは実はスイスのバンドです。

スイスと言うと、かのトード(TOAD)もそうですが、音的にはドイツの ドロドロが適度に抜けた感じでかといってブルージーにならず、ビート色 は少なく、と、言ってしまえば中途半端なのかもしれませんが、そこに 絶妙の『クール』な肌触り感があって、非常に魅力的です。

この手のバンドにはアルバム1枚出して消える所謂一発屋が多いのですが、 ご他聞にもれず彼らこれ一枚のみです。

なにはともあれ、まずこのレコードはジャケットのインパクト!!

昨今であれば絶対こんなジャケにはしませんし、せっかくアルバム制作 までこぎつけたのに、これでは家族にも配れなかったのではなかったかと いらぬ心配までしてしまいます。しかも内ジャケのメンバーの写真は エフェクト処理されていますので、誰が誰かもわかりません。

さて肝心の内容ですが、のっけからいきなりのアコースティックな展開で ジェケットと中身を間違ったのではないかとも思う位、意表をつかれます。

が、ヤバイな…と冷や汗をかいているのもつかの間、すぐにダークな ヴォーカルとダークなベースが全体を支配していきます。このなんとも 煮え切らないヴォーカルこそがドイツならでは。(あ、スイスか)

リズムがダダダダッと定期的に畳み掛けてくるあたりで、オォォォ!! ま、待っていました!!という瞬間が訪れます。手数の多いドラムスは オカズも多く、テクニカルで好感が持てます。

そして時折現れるフルートが独特の不思議な雰囲気を醸し出します。

プログレでフルートが入ってくるとイタリア的に陥りがちですが、 しっかりドイツしています。(だからスイスですが・・。)

A-2にくるともうB級の真骨頂です。

「ドラマーの夢」という何のひねりもないタイトルですが、ドラムスが テクニカルに、それでいてさりげなくリズムを刻んでいきます。 ギターもよく鳴りますが、ドラムスが中心の曲です。

ちょっとジャムっぽくなりますが、それでも体勢は崩れずで、その あたりはプロデューサーの腕前でしょうか。予想とおりドラムソロも 入ります。これもフツウならスルーしてしまいがちなのですが、 上手さ故なのか、思いがけずじっくり聴いてしまうのです。 『素晴らしき世界』ライブサイドのジンジャー・ベイカーのソロよりも 聴けます。(おっと!)

B面はよりダークでクールです。

いわばジャーマン・ロック界のiPhoneか、とでもいえるスマートさで、 怪しいベースと遠いヴォーカルは、ジャック・ザ・リッパーが徘徊する ロンドン(だからスイス・・)か。エロイをもっと崩した感じで、 フルートも実にイイのです。さらに畳み掛けてくる瞬間の、突然味が 濃くなるような感じにはハマらずにはいられません。

ソースかけすぎ感は保ちつつ、背中がゾクゾクするような大人向けの サウンドは、ジャーマン・ロックファンはもとより、ジャンルを超えて 受け入れられる名盤だと思います。

オリジナルは激レアですが、オリジナルで入手しても絶対に後悔しない、 そんな一枚です。

(2011.11.30)