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第263回 THIN LIZZY  "Same Title"

THIN LIZZY - "Same Title"
1971 UK DECCA SKL5082
(Progressive Rock)

RARE:★★★

Member :

Phillip Lynott(vo,b,g), Eric Bell(g), Brian Downey(ds)


Side (A)
1. The Friendly Ranger At Clontarf. Castle
2. Honesty Is No Excuse
3. Diddy Levine
4. Ray-Gun
5. Look What The Wind Blew In


Side (B)
1. Eire
2. Return Of The Farmer's Son
3. Clifton Grange Hotel
4. Saga Of The Ageing Orphan
5. Remembering



スキッド・ロウ(SKID ROW)フィル・ライノットは、自身が69年に結成したこのシン・リジーというグループを通じ、地元アイルランドで 国民的英雄となった人物で、83年にヘロインが元で他界、今ではロック史上の伝説です。

シン・リジーといえば、特に後期名作『ブラック・ローズ』(Black Rose)の出来が素晴らしく、プログレというよりハード・ロック・バンド としての方が知られているかもしれません。自身が割りとメタル系のファッションを好んでいた為、NWOBHM系かと勘違いされてしまうことも あったとか。

さて、ここで紹介する作品は、彼らの記念すべきデビュー作にあたるもので、ハード・ロックの名作として誉れ高い2ndほどの完成度はないの ですが、所々に滲み出るような哀愁のアイリッシュ・ムードが素晴らしく、個人的には『ブラック・ローズ』と同じくらい好きな作品でもあります。

初期というと2ndばかりが目だってしまい、注目度も低いこのデビュー・アルバムですが、騙されたと思って、A-1とA-2だけでも最後まで 聴いてみて下さい。A-1の湿り気のある異常に奥ゆかしいベースの調べに、唸る人も多いはずです。そんなA-1に続くA-2の一転した雰囲気と アイリッシュ・テイストが湧き出るようなフィル・ライノットの歌声は、デビュー作とは思えない深き味わいです。

更に彼のベースの響きが頬を優しく撫でていく後ろから、メロトロンがさりげなく溢れ出て来る瞬間は、もう全財産をなげうってもいい!と言う の至福の時です。

そして完全に確立しているヴォーカル・スタイルもまた大きな魅力です。

このフィル・ライノットという人が持つ独特の歌声は、どんなに曲が明るくても決して軽くならないところが凄いところです。中期以降に多く なるブルージー&ハードに迫る曲よりも湿り気バラッドの方が絶対に合っていると思います。

確かに完成度はそんなに高くない作品ではありますが、例えばB-4なんかに突如収められているアコースティックなナンバーとかが、さりげなく 絶品だったりします。

ヴォーカルの持つオリジナリティという点ではある意味スティーブ・マリオット(Steve Marriott)と双璧かもしれません。

地味ながらも、誰にもマネの出来ない二度と出ない作品だと思います。

(2007.08.30)