BACK TO HOME

第45回
BIGLIETTO PER L'INFERNO
"Same Title"

BIGLIETTO PER L'INFERNO - "Same Title"
1974 ITALY TRIDENT TRI 1005 (Heavy Progressive Rock)

RARE: ★★★★★

Member : Giuseppe Banfi(key) , Mauro Gnecchi(ds)  , Marco Mainetti(g) ,
Giuseppe Cossa(key) , Claudio Canali(vo,flute) , Fausto Branchini(b)
Side (A)
1. Ansia
2. Confessione
3. Una Strana Regina
Side (B)
1. Il Nevare
2. L'Amico Suicida

イタリアンプログレ幻の名作を多数輩出したTRIDENTレーベル。
今回紹介するこの作品(ビリエット・ペル・インフェルノと読むようです)はそのTRIDENTレーベルの5番にあたります。

このアルバムを初めて耳にしたのは、70年代イタリアンプログレが日本で一大ブームを巻き起こしていた80年代の後半でした。
それまでハードロックしか聴かなかった当時の私はKING CRIMSONELPPINK FLOYD等のブリティッシュプログレでさえも殆ど耳にしませんでした。
ロックを聴き始めたばかりの頃に聴いたCRIMSONの1st(『クリムゾンキングの宮殿』)のB面にどうしても我慢が出来ず、食わず嫌い的にプログレは聴かない主義を貫いていたのです。(今ではこのアルバムも大好きですが)

そんな私にとって、ハードロックとプログレの中間のような作品が多く、かつドラマティックな内容の多いイタリアの音楽はプログレ入門にはうってつけの存在でした。
ブリティッシュプログレが好きでも、GENESISCAMELのような甘い感じの音楽が苦手な人は、情熱的でドラマティックな血がたぎるようなイタリアの音楽を是非一度聴いてみて下さい。
マニアの間でよく言われているように『イタリアの音楽にハマっても最終的にはブリティッシュロックに戻ってくることになる』という言葉もありますので、『ブリティッシュ以外は絶対聴かない』と片意地張らずに、たまにはこんなイタリアもいいかと思います。

さて前置きが長くなりましたが、この作品はBancoCervelloMuseo Rosenbach等とともにイタリアのプログレを代表する一枚なのですが、他とは違ってハードロック色がかなり強いのでハード系の人に大推薦です。

このアルバム、クレジットの上ではA面3曲、B面2曲となっていますが、実際に聴いてみるとはA面2曲とB面3曲にしか聞こえなくて、どうしてもレコード上のレーベルが貼り間違っている(A面とB面が逆))ような気がしてなりません。
これは私の持っているものだけなのか?と思いつつ、確かめようもないまま今日に至っておりますので、このレコードお持ちの方、一度お調べの上ご一報頂けると有り難いです。また、何かご存知の方は是非お教え下さい。

と、いうことで、ここからは、レーベルが貼り間違っているという前提で話をさせて頂きます。
A-1はちょっと休憩という感じの普通の曲ですが、問題はA-2です。
やや静かな出だしから既に嵐を予感させますが、この曲の劇的な展開の素晴らしさといったらもう筆舌に尽くし難いものがあります。
明訓高校の殿馬が弾いているかのようなドラマティックなピアノ、そしてワイルドなギターと鳥肌モノにかっこいい巻き舌イタリア語ヴォーカル、更にはヘヴィなリズムの上を縦横無尽に舞うフルートというとんでもない内容。
ブレーキの壊れた暴走トレーラーが日光いろは坂を全速力で駆け上っていき、そうかと思えば今度は一気に下って行くような、実に目まぐるしくも激しい内容で、しかも行く手には次々と障害物が待ち構えているというそんなスリリングな展開なのです。
問題のA-2が終わった後のA-3は、とうとう暴走トレーラーが事故ってしまい、おまけに雨まで降り出して、トレーラーの横でびしょぬれになりながら呆然と立ち尽くしている、そんな(どんなんだ)静かでしっとりとした感じの曲です。

B面はクレジットでは曲が分かれていますが、実際には殆ど1曲の構成となっていて静と動のコントラトが素晴らしく、T2のB面くらいのヴォルテージが保たれているので、最後まで間延びすることなく一気に聴いてしまいます。
また、うわーーっと盛りあがったかと思うと、パタッと静かなピアノの調べに転調するあたりは、オリンピックの床運動のエンディングを見ているかのようで、正にイタリアンプログレの真骨頂といっても良いでしょう。
このイタリア独特の感覚に快感を覚えてしまった人にはもう麻薬のような作品です。