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第36回
SHIRLEY COLLINS & ALBION COUNTRY BAND
"No Roses"

SHIRLEY COLLINS & ALBION COUNTRY BAND - "No Roses"
1971 UK PEGASUS PEG 7 (Folk Rock)

RARE:

Member : Shirley Collins(vo), Ashley Hutchings(b), Richard Thompson(g), Simon Nicol(g),
Dave Mattacks(ds), Ian Whiteman(key), Roger Powell(ds), Tim Renwick(g),
Lol Coxhill(sax), Maddy Prior(vo), Dave Bland(concer,dulcimer), Tony Hall-
(melodeon), John Kirkpatrick(accordion), Dolly Collins(key), Nic Jones(vo,fiddle)
, Barry Dransfield(fiddle,vo), Francis Baines(hurdy-gurdy), Alan Cave(bassoon),
Alan Lumsden(ophicleide), Steve Migden(french-horn), Colins Ross-
(Northumbrain small pipes), Royston Wood(vo), Lal & Mike Waterson(vo),
Gregg Butler(serpent), Trever Crozier(jew's harp)

Side (A)
1. Claudy Banks
2. The Little Gypsy Girl
3. Banks Of The Bann
4. Murder Of Maria Marten
Side (B)
1. Van Dieman's Land
2. Just As The Tide Was A 'Flowing
3. The White Hare
4. Hal-An-Tow
5. Poor Murdered Woman

ブリティッシュフォークの重鎮Ashley HutchingsALBION COUNTRY BANDを中心に総勢26名のメンバーを動員し、その妻Shirley Collinsを強力にバックアップした歴史的なアルバム。
この手のエレクトリックフォークの作品としてはFAIRPORT CONVENTIONの『Liege & Lief』やSTEELEYE SPANの『Hark! The Village Wait』に比肩し得る名作です。

Shirley Collinsという人はブリティッシュフォークを語る上では絶対にはずす事のできない言わば女王のような存在。ギターでいうところのJimi Hendrixのような存在です。
デビューアルバムのリリースがなんと1959年という大ベテランで、デビューした年が仮に19歳だったとしても、今年60歳になってしまっているというこれはもう大変な状況です。
そんな人のレコードを東洋の島国の一小市民がカーステなんかで聴いて、更にメルマガでウンチクをたれているというのはちょっと考え物かも知れません。

このアルバム以外の作品はもっと地味で渋い内容となっているものが多く、余程トラッドに慣れた人でないと聴きこなすのは相当難しいのではないでしょうか。
また、この人の歌声には、フィメール物の好きな人が求めるような優しさや美しさが余り感じられず、英国淑女の凛とした気品と風格といったものがそこはかとなく漂っています。
表面的なところだけを捉えた場合、口の中に何かを入れたまま扇風機に向かって歌っているようなややこもったような声なので、一聴した限りではこの人本当にそんなに凄い人なのか?と思ってしまいますが、聴きこめば聴きこむほどにその英国然とした魅力が伝わってきます。

先にも書きましたが、Shirley Collinsの他の作品は殆どが純トラッドとなっており、普通のロックファンが軽い気持で買ったりすると全く手におえず『わちゃ〜!失敗した。』てな事になってしまいますが、このアルバムはロックファンの方にも充分受け入れられるような内容ですので、買って帰って実際に聴くまでドキドキという事はありません。
また、どの曲もちゃんとドラムスが入っているという点もロックファンにとってはとても重要なことで、アジア料理が苦手な人にとって料理に香菜(シャンツァイ)が入っているかどうかくらい大変なことなのです。

A面、B面とも素晴らしい曲がズラリと揃えられていますが、特にA面の流れは圧巻です。
ブリティッシュロックの力強さを感じさせるヘヴイなリズムのA-1、ヨーロッパ映画の舞踏会のワンシーンを彷彿とさせるような躍動的なA-2。特にA-2のようなダンスチューンのイントロで鳥肌がたつというのはとても珍しい事です。
そして姉Dolly Collinsのピアノが優しく奏でるバラッドA-3は、夕焼けの中を一人立ち尽くすような感動的な美しさに満ち溢れています。
A面ラストは再び力強いドラムスに導かれたロック色の強い展開。途中のブレイクでのCollinsの歌唱が絶品で、壮大な山脈のはるか上空からまっさかさまに降下する鳥のような感覚がたまりません。

これからフォークを聴いてみようと画策しているロックファンの方にお薦めのアルバムです。